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「許してあげるわ」敦子はそう呟いた。私は画面からやっと視線を離し、隣席の女性を見つめた。言葉などすぐには出てこない。でも、長い十年だったけれど、希望はまだ捨てずにとっておいた。それがこのカウチであり、それが彼女が座るべき場所、いるべき場所、である。その一席だけあれば、十分だった。あなたが座れるスペースさえあれば、世界はまた元にもどることができる…(「愛という名の報復」より)小さな物語の中にいくつもの一瞬が存在する。その一瞬の光の中で人は恋と出会い愛と暮らし時を紡いで行く。知り合って、憧れて、優しくされて、ときめいて…。世界のどこかにかならずいるはずの「その人」を求めて、ひたむきに熱く永遠を旅する恋人たちの物語。辻仁成初の短編集。
【目次】
優しい目尻/目下の恋人/君と僕のあいだにある/バッドカンパニー/好青年/偽りの微笑み/青空放し飼い/王様の裸/世界の果て/愛という名の報復
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